朝日新聞・2023年9月21日より転載
和歌山県印南町と日高川町の境界付近にある尾根で計画されている風力発電の建設事業をめぐり、県が環境面への懸念を示す意見書をまとめた。
計画中止を求める地元の市民団体の反発もあって、事業者側は対応を迫られている。
事業は、東急不動産(東京)が手がける。
二つの町の境界付近にある尾根1160ヘクタールの区域に、出力4300~6100キロワットの風力発電設備を最大22基設置する計画だ。
東急不動産は今年3月、建設開始に必要な環境影響評価(アセスメント)の方法書を示した。
これを受け、岸本周平知事が意見書をまとめ8月23日付で国に提出した。
意見書は、計画区域やその周辺は、県指定の天然記念物「川又観音のトチ」があり、住民が生業とする「紀州備長炭」の原木もあるなどとして、「非常に重要な場所」と指摘。
生態系も豊かで、カモシカやヤマネなどの貴重な動物が生息している可能性があるという。
さらに、尾根は幅が狭く谷への傾斜は急であり、土砂災害特別警戒区域なども存在していることから、「規模の大きな風力発電事業には著しく適さない場所と考えられる」とした。
この意見書について、地元住民らでつくる「印南日高川風力発電建設を考える会」(約20人)は、「私たちの思いがこもった意見書を出していただいた」と評価する。
団体はこれまで、環境への影響や土砂災害の発生などを懸念し、反対署名を集めたり、計画の中止を求める要望書を提出したりしてきた。
また団体は今月13日、地権者への合意書の集め方に問題があるなどとして、東急不動産にやめるよう県に指導を求めた。
団体の記者会見によると、合意書には「本件土地において、本事業に必要な施設を設置し稼働させることについて同意する」との記載がある。
「環境への調査としながら、事業に必要な施設を設置し稼働させることなどの合意を求めている」と主張した。
◇
東急不動産は朝日新聞の取材に応じた。
知事の意見書については、環境影響に配慮すべき事項が多くあることは十分に認識しているとしたうえで、「環境影響を極力回避・低減する具体的な事業計画を策定して参りたい」とした。
一方、団体が改善を求めた合意書の集め方について、東急不動産は「不適切とは考えていない」。
合意書締結の際には合意書全文を読み上げ、補足説明資料を用いて説明をしたという。
さらに「本合意書をもって一方的に事業を進めるつもりはなく、説明を尽くし、ご理解を得ながら事業を推進して参りたい」と回答した。(松永和彦)


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