「風力発電の影響検討を」
『北海道新聞』2024年8月13日
風力発電の適地とされる道北で、渡り鳥が風車を回避するために移動ルートの変更を強いられる「障壁影響」が生じていることが、日本野鳥の会(東京)による調査で分かった。渡り鳥は50キロ飛ぶごとに体重の1%に相当するエネルギーを使うといい、風車の急増で移動ルートが妨げられれば、目的地や中継地にたどり着けずに死ぬなどのリスクにつながりかねない。同会は「事業計画を立てる企業は風車の累積的影響を検討すべきだ」と警鐘を鳴らす。
風力発電による鳥類への影響については、バードストライクが広く知られている。海外では以前から障壁影響も問題化していたが、国内の現地調査で影響が明らかになったのは初めて。
同会は2023年秋、24年春の2回にわたり、稚内市と宗谷管内豊富町、幌延町の計42カ所と留萌管内天塩町の3カ所で、マガンやオオヒシクイ、コハクチョウの群れを観察。2030群、8万6千羽の移動ルートを17~18年の春と秋で計4回行った前回調査と比較した。
宗谷総合振興局の集計によると、同管内では18年3月時点で稼働していた風車は8カ所97基だったのに対し、24年3月には18カ所206基と2.1倍に急増。その結果、23年秋は上勇知ウィンドファーム(稚内、12基)から浜里ウインドファーム(幌延、14基)にかけての少なくとも7カ所、24年春は3カ所で、渡り鳥が風車のある丘陵を左右に迂回(うかい)したり、上昇して風車をよけるなどの障壁影響が確認された。
また、前回調査では宗谷管内の移動ルートが1市3町の広い範囲に分かれていたが、23~24年は渡り鳥の「通り道」が風車に遮られ、ルートが一部に集中する傾向もみられた。同会によると、前回は15~20キロの幅があった通り道が、10キロ以下に狭まったところもあるという。
ガン類、ハクチョウ類は秋にシベリアなどの営巣地から南下し、主に本州で越冬する。一方、道内は再生可能エネルギーの潜在力が全国一とされ、勇払原野(苫小牧、胆振管内厚真町)など渡り鳥の中継地でも事業計画が相次ぐ。
同会自然保護室の浦達也主任研究員は「渡り鳥にとっては既存の風車や同業他社の計画との累積的影響は大きい」と指摘。中継地や、越冬地までのルート上にさらに風車が建設され、渡り鳥が回避を繰り返すことになれば「目的地にたどり着けなくなる可能性もある」と危惧する。
同会は前回調査と同様に春秋の2回ずつで比較するため、24年秋、25年春にも調査を実施し、詳細に分析した上で、国際学会で報告する予定。


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