「北海道新幹線の工期予測、経験で設定。想定外のリスク重なる」 札幌延伸遅れの背景 有識者会議・森地座長に聞く

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 北海道新幹線の整備に関する国土交通省の有識者会議は3月、札幌延伸の時期が目標としてきた2030年度末から38年度末以降に遅れるとの見通しをまとめた。大幅に遅れる上、正確な開業時期がまだ定まらないのはなぜなのか。有識者会議で座長を務めた森地茂・政策研究大学院大学名誉教授に話を聞いた。

 ―開業見通しはなぜ38年度末以降になったのですか。

 「工事でどんなリスクがあり、そのリスクがどの程度工期に影響するのか議論しました。

工期短縮策も議論した上で、現時点で1番可能性が高い開業時期は38年度末だという結論になりました。ただ、さらに遅れる可能性もあります。これまでも想定外の事態が重なってきましたから」

 ―トンネル工事の難航が開業遅れの要因になっています。

 「これまで新幹線を整備した地域では、高速道路が先に通っているため地質の情報が得られていました。今回は近くに高速道路がなく、地質の情報量が少なかったことが影響しました。羊蹄トンネルでは、羊蹄山の噴火でできた岩がどの辺りにあるのか把握できていれば、もう少し違うルートを選び、工事もスムーズにいっていたかもしれません。またトンネル工事で出る残土の処理ルールが厳しくなり、地元で受け入れる場所がなかなか決まらなかったことも工期の遅れにつながりました」

 ―新たな開業見通しの議論は昨年5月から始まりましたが、38年度末という時期はいつごろから浮上していたのですか。

 「いろいろなリスクを考えた時、あり得る工程の一つとして割と早くから議論に出ていました。ただ、その段階では開業見通しという意味ではありませんでした。決まったのは最後です」

 ―開業が38年度末より早まる可能性は無いですか。

 「早くなると考えるのはすごく楽観的です。全てがうまくいったら早くなるでしょうけど、それを想定してまちづくりをするのはリスクが大きすぎます」

 ―開業時期を見極める上で難しかった点はどこですか。

 「羊蹄トンネルで岩が相次いで出てきたのは想定外でした。これから川が流れている場所の地下を掘り進めますが、そこでも岩が出る可能性があります。地上から岩を取り除くには、川の流れをいったん変えなくてはなりません。自然への影響もあり、苦しい判断でした。渡島トンネルの工区の未掘削区間を調べる長尺ボーリングが途中で終わってしまったことも、見極めが難しくなった要因でした」

 ―建設主体の鉄道・運輸機構も事前に調査して工程を組んでいたのに、なぜこれほど遅れることになったのでしょう。

 「工期は一般的に、過去の事例ではトンネルや橋に何年かかったかといった経験を基に設定しています。実際にきちんと調査して決めたものではないため、科学的とは言えません。特に新幹線は財源ベースで開業時期などを決めています。地質の状態など不確実な要素がありますから、予定通りにうまくいくか分からないのです」

 ―今回の問題は、今後の新幹線工事に向けてどのような教訓になりますか。

 「以前、北陸新幹線の検証委員会の報告書をまとめた際にも同じことを書きましたが、本来はきちんと現地を調査してから開業時期の議論をすべきだと思います。まだよく分からない段階で時期を確定的に言うことが正しいのか、改めて考えるべきです」

 ―札幌延伸の目標は当初の35年度から5年前倒しされ、30年度末となった経緯があります。

 「政治的に決まった話であり、それが科学的に正しかったかというのは別の話です。鉄道というのは日本だけでなく、どこの国でも政治問題になりやすいです」

 ―開業遅れにより、事業費の増加が懸念されます。

 「一般論としては、工期が延びればコストは増えます。今回は川の流れを変えてまた戻すなど、もともと想定していなかった工事もやりますから、工事費は当然増えるでしょう。ただ開業時期がまだ定まっていないため、事業費については時期が正確に見えてから議論していくのが良いと思います」

 もりち・しげる 京都市生まれ。東京工業大教授、東大教授を経て、2024年3月まで政策研究大学院大学客員教授。北海道新幹線の整備に関する有識者会議の座長は22年9月から。専門は交通政策など。

( 山田一輝 )

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