2026年1月5日に発電を開始した浮体式洋上風力発電所「五島洋上ウインドファーム」=長崎県五島市で2025年10月31日午前10時1分、信田真由美撮影
2026/1/6付け『毎日新聞』より
イセエビ漁が盛んな長崎県五島市の崎山漁港。小型漁船が停泊するのどかな港から沖合に7キロ離れた海域で5日、海の上で風を集めて発電する風力発電所(洋上風力)の「五島洋上ウインドファーム」が商業運転を始めた。事業を主導する大手企業や地元住民のみならず、日本政府も再生可能エネルギー普及の「切り札」と期待を寄せる目玉プロジェクトだ。
最大の特徴は、風車を含め全長約170メートルの構造物を海に浮かせる「浮体式」を採用していること。浮体式を使った大規模な商業発電は日本初だ。
洋上風力で先行する欧州では海底に風車の土台を固定する「着床式」が主流だが、遠浅の海が少ない日本では適地が限られる。水深130メートルを超す深い海域でも設置可能な浮体式は「日本で洋上風力を劇的に増やす潜在力を秘めた技術」(風力発電業界関係者)と注目されているのだ。
技術を開発したのは準大手ゼネコンの「戸田建設」。トンネル建設などで培った土木や設計の知見を生かした。構造物の半分程度を海中に沈めて浮かせ、遠くに移動しないように海底にチェーンで固定。倒れてもすぐに起き上がる「起き上がり小法師(こぼし)」の原理を応用し、波や風にあおられても安定して浮いていられる構造を編み出した。
発電した電気は海底ケーブルを通じて変電所に送られ、地元の小売り電気事業者を通じて五島市内の家庭や企業に販売される。出力は計16・8メガワットで、一般家庭約1万4000世帯の電力を賄う予定だ。
商業運転開始が近づいていた25年10月、現地でボートに乗って海上に浮かぶ風車に近づくと、その迫力に圧倒された。海面に出ているのは「ブレード」と呼ばれる風車の羽根を含め高さ約100メートルで、大阪の観光名所「通天閣」に匹敵する。それが約600メートル間隔で8基も集まっている。海上でボートが揺れても本体はほとんど動かず、波間に浮かんでいるとは思えない不思議な光景だった。
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